左目の上にまるで太い眉毛のような模様のあるごまちゃんは、ダックスフント・ミックスなので足が短い。顔つきもオヤジみたいだが、これでもまだ2歳だ。コワモテの顔に似合わず、やさしい性格だという。

3. 鳥毛家のシアワセな犬生活

ギャニャールの鳥毛清喜さん宅に潜入

ーチフロントの家で放し飼いされている11頭の犬たち。飼い主の愛情と素晴らしい環境の中でお腹いっぱい食べて好きなだけ遊べる、こんなシアワセなバリ犬が他にいるだろうか。

■鳥毛家のお犬さま

バリ豆犬(ピーナッツ犬)
 はっちゃん(3歳/♀)、チャチャ(3歳/♀)、パグ(4.5歳/♀)、クロ(10歳/♂)、イソ(2歳/♀)、メイ(6ヶ月/♂)、ジュン(6ヶ月/♀)

キンタマーニ犬(バリ犬)
 チョコ(5歳/♂)、ちび(1.5歳/♂)

ミックス
 ごま(2歳/♂)、スポッツ(5歳/♂)

 世界的なガラスアーティスト鳥毛清喜さんの自宅と工房は、ギャニャールのビーチフロントにある。敷地が広いだけでなく、目の前のビーチにも簡単にアクセス出来る好立地。国道まで出なければ、車もほとんど通らない。こんな素晴らしい環境の中に、十一頭の犬たちがいる。ほとんど捨て犬か、行くあてがなかった犬たちだ。彼らは本当にラッキーだと思う。仔犬の時に捨てられて死んでしまう犬、人に飼われていても、放ったらかしにされて人の愛情を知らない野良犬同然の犬、鎖につながれて散歩もさせてもらえない番犬専門の犬などが多いバリ犬の中で、これだけの愛情と環境と自由を与えられているコたちも少ないだろう。

 清喜さんの犬バカ歴は長い。子供の頃から犬のいない生活をしたことがないという。小学校四年生の時には、自宅で飼っていたテイというミックス犬と一緒に家出までしたというから、かなりの強者だ。それも、お父さんが土佐犬を買って来たために、雑種のテイが家族からないがしろにされるようになったことに対する抗議の家出だった。少年だった清喜さんが犬を連れて山道を歩く姿が目に浮かぶ。なんとも微笑ましい光景ぢゃないか。

 大人になってからは、イギリス産やアメリカ産ではない本場のアフガンハウンドが欲しくて、内戦の続くアフガニスタンの国境まで行き、雄雌二頭を購入。日本で最初にアフガニスタンから直接アフガンハウンドを入れたのは、なんと清喜さんだったのだ。
 スパニッシュ ガルゴという珍しい犬種の犬を飼ったこともある。けれど残念ながらこのコが獣医の誤診で死んでしまい、悲しみにくれていたちょうどその時、工房でテレビコマーシャルのマネをして賑やかに遊んでいたスタッフをその場で全員クビにしたそうだ。犬が死んだ日にふざけているのが許せなかったのだ。かれこれ二十年前のことになる。
 こうして今まで色々な犬種を飼ってきた清喜さんは、ある結論に達した。
 「犬はみんなおんなじです。血統書がついていようといまいと関係ありませんね。やることはほとんど同じだし、みんなかわいい」。
 見た目がきれいだとか、毛並みが良いとか、そういうことで判断せず、すべての犬に無償の愛を与えているのだ。こんな飼い主の元で暮らす犬はどんなにかシアワセだろう。

 こちらにお邪魔すると、私はいつもシアワセな気分になれる。どこを見ていても、必ず目の端には犬の姿が写るからだ。それも、ゆったりとくつろぐシアワセそうな犬たち。まるでひなたぼっこをする猫を見る時のような、ほのぼのとした優しい気持ちになれる。どうかいつまでも彼らのシアワセな日々が続きますようにと祈りながら、午後の日はゆっくりと過ぎていった。



*この記事は「H.I.S.バリフリーク2004年12号」に掲載されたものです。