2/4「バリ人と子供」
 バリ人は子供を可愛がる。こんなに子供好きの人間が多い国は、滅多にないんじゃなかろうか。
 というのも、バリ人にとって子供は宝物なんだそうだ。村々で結束しその中で生きることの多いバリ人にとって、子供は自分の村の未来を支える宝物。
 大らかなバリ人は、村の子は自分の子も同然だと考える。そして、村の子じゃなくても、バリにいる子なら、これからの世の中を支えるみんなの宝物だと考える。
 あたしたちがステイしたビラ付のバトラーさんは、息子をとても可愛がってくれた。
 前日、なにげなく彼に、
「明日は九時にホテルを出発し、観光しにゆくんです」
 と教えたら、当日、彼は八時にあたしたちのビラを訪れ、
「お母さんたちが用意する間、わたしが息子さんを見てますから」
 笑顔で有り難いことをいってくれるのだ。
 これはホテルのサービスの一つではない。バトラーさんが本気で息子を可愛いと思ってくれているのがわかった。
 息子を見つけると、彼はその肩にひょいと抱き上げ、
「散歩にいこうか」
 なーんてさらりといってくれた。こちらから申し出てもいないのに。
 子供は大人の気持ちに敏感だ。息子もバトラーさんにたいそう懐いていた。最終日、彼にさよならを告げるのはよほど辛かったのだろう。息子は手を振りながらいつまでも涙ぐんでいた。
 道を歩いていると、バリの人々は気さくに声をかけてきてくれる。子連れで出かけるとなおさらだ。
「可愛いね。何歳なの?」
 観光地では従業員の方々が、頼んでもいないのに息子をあやしていてくれた。
「抱っこさせて」
 と申し出てくれた。おかげで、ゆっくりと買い物や食事をすることができた。心から感謝した。
 日本人が忘れてしまった言葉にできないものを、バリの人々は持っているみたいだ。
 バリにいる間、贅沢とはいえない身なりをしたバリ人の両親が、余所いきのように飾り立てた子供を連れて歩いている姿を何度も見かけた。ほほえましかった。