4/4「バリ人の男」
 バリが気に入って、即座に考えることは一つ。
(この国に住めないだろか)
 ということである。
 五十五歳を過ぎて職を持たない日本人には永住制度があるらしい。が、あたしはまだまだ働かなくてはならん。せめて息子が成人するまでは。
 そこで、安易なあたしは、
(なら、バリ人と再婚したい)
 と思った。
 いいじゃん、いいじゃん。滞在していて、バリの男たちの女への態度に感動した。とにかく優しいのだ。
 容姿を誉めてくれるのなんて日常茶飯事。ドアを開けてくれたり、荷物を持ってくれたり。女に対して、それがお婆ちゃんでも、いたせりつくせりなんである。
 だが、それと同時に気づいたこともある。街に出ると、日陰でぼうっとしている男たちをよく見かけた。博打をしている姿もたくさん見かけた。働いている男よりも、ぼうっとしている男のほうが多いんじゃなかろうか。バリに住んでいる人に訊ねたら、現在、バリは、働き口よりも働きたい人間で溢れているそうだ。日本もまたしかり。
「でもなぁ、どうして男ばかり?」
 あたしがさらに突っ込んだ質問をすると、その人は笑って答えた。
「バリでは男の子が産まれるととても大切にされるの、家の後取りだって。その可愛がり方は女の子の比じゃないわね。半端じゃないわ。バリの男は小さな村の中で、お婆ちゃんに可愛がられ、お母さんに可愛がられ、お姉さんに可愛がられ、叔母さんに可愛がられ、溺愛されて育つの。だから、バリの男は女に甘えるのが上手なのよ」
 日陰でぼうっとしている男たちは、お腹が空くとご飯を食べに家に帰るんだそうだ。きっと、働き者の女たちが美味しい食事を作って、笑顔で彼らを迎えてくれるんだろう。
 バリの男、うらやましい。一緒に旅行した父なんて、
「次ぎに生まれ変わるなら、バリの男だ」
 なーんて断言していたぞ。
 余談だが、バリの男は結婚していても女にそのことを聞かれると、シングルだと胸を張って答えるらしい。愛してる、なんて口癖らしい。けど、なんか憎めない。屈託のないあの笑顔が。