2. ワヤンクリッ作りを見てみたい

お頭
 バリに来る前、ガイドブック等でバリの文化や芸能の情報を見た時、必ず目にするはずの「WAYANG KULIT(ワヤンクリッ)」。ワヤンクリッとは、簡単に言えば影絵芝居や人形劇、人形芝居のこと(使われる人形自体もそう呼ばれる)。その中で、夜、ワヤンクリッを使って行われる影絵芝居は「ワヤンプトゥン」と言い、スクリーンと光となる火を使う。昼間に行われるものは「ワヤンルマ」と言い、人形が観客の前に直接露出される。

 ウブドでも定期公演があったりするが、昔からウパチャラ(儀式)等の時に上演されているものだ。神様の為に捧げられるワヤンは「デワヤッドゥニャ」。結婚式等の儀式で、人の為に行われるのは「マヌシアヤッドゥニャ」と、言い方も違う。芝居と呼ばれるだけあり、ストーリーの中にはいろいろな人物や動物が登場する。

 公演は観たことがあるけれど、それまでの過程もちょーっと覗いてみたい。そこで、今回はウブドの南東にある、町中皆ワヤン作りというワヤンの町、スカワティにお邪魔した。


子供の頃からダラン(ワヤンクリッの人形使いでもあり語り手でもある)であるスディアナさん。もちろんワヤンクリッ作りもする。昼間はISI(インドネシア国立芸術大学)のダランの先生でもある。息子のグスディアン君は3才半の時、子供のワヤンコンテストでダランとして最年少で参加。またスディアナさんのお父さんもダランでワヤン作りの名手だ。
まず、紙に書いた下絵をワヤンの本体となるなめした半透明の牛革の下に敷き、フェルトペンで透けた絵を写していく。
「牛革はデンパサールで沢山仕入れられるんだ」。
全て写し終ったら、いよいよ細かい作業の始まりだ。
釘で牛革を止め、色々な種類のノミをトンカチで叩き、ラインに沿って穴を開けていく。
「穴を続けて開けていくと線になって、切り落としが出来るんだ」。
とても根気のいる作業だ。スディアナさんは学校が終った午後や休みの日にワヤンクリッ作りに励む。
穴を開け続け、やっとワヤンクリッの形が完成。腕等の動かすパーツもこの時点で付ける。ここまでもちろん1日では出来ない。作業の調子によって何日かかかる。
「ワヤンクリッのクリッとはインドネシア語で『革』のことなんだよ」。
次は第二の難関色付け作業だ。
まず全体を黒で塗りつぶす。夜のワヤンの時、色がスクリーンから映し出ない為だ。
黒く塗りつぶし終ったら、色を付ける場所だけ白塗りをし、その上から色々な色を塗っていく。更にその上に模様を描き、金を塗る場合は最後に金色を付ける。
やっと完成。半透明の牛革が装飾され、こんなに美しいワヤンクリッに変身。これはまさに芸術作品。因みにワヤンクリッの種類は125種類。きらびやかな神様もいれば、滑稽な道化、動物達もいる。
「中央にあるのは、森羅万象を表す、ワヤンの中でも重要なカヨナンというものだよ」。


しっぽ
 出来上がりを見せてくれた時、語りを入れながらワヤンクリッを動かしてくれたスディアナさん。ダラン独りで人形を操り、拍子を取り、語りを入れるので、沢山ある人形の特徴によって声色も変える。また、それはインドネシア語でもバリ語でもなく、昔のジャワの言葉、カウィ語で語られる(バリ語で行われる場合もある)のだ。基本になる話は2つ、「ワヤン パルウォ」と呼ばれるマハーバーラタの話と、「ワヤン ウォン」と呼ばれるラマヤナ物語の話で、長いストーリーだけに登場人物も多くなる。

 ダラン、ワヤンクリッ作りの名手として、このスカワティの中でも一目置かれているスディアナさん。彼はてきぱきと作業をこなしていた。それは、気の遠くなるような細かい作業の連続。これからワヤンクリッを観る時は、話や動きだけでなく、その前にこれだけの苦労があるという事をきっと忘れられないだろう。本当に御苦労様です。

芸術作品!
Sangat indah !
(素晴らしい)



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