2. 盆と正月

バリ島にはサカ暦とウク暦という旧暦があって、この暦を元に宗教儀式やお祭りの日が決められる。お正月もニュピという旧正月がメインなので、西暦のお正月はロコたちの盛り上がりに欠けるのだ。正月休みも元旦だけ。けれど、私たち在住日本人にとっては、お正月はやっぱり1月1日だ。暑さで汗をかきながらも、日本と同じように年末年始の挨拶をかわし、紅白の話題で盛り上がる。和食屋さんではおせちが用意され、ささやかなお正月気分を味わう楽しみがある。けれど、観光地バリ島で働くものにとってはお正月はかきいれ時なので、お正月休みに旅行に行かれる人の方が少ないはずだ。だいたい休みが1日しかないしね。私もこのバリフリークを始めてからは毎月頭が締め切り前なので、結局お正月もだらだらと仕事をしているワーカホリック。お腹は立派なメタボリックだ(笑)。
一方、旧暦のお正月ニュピの前にはロコたちもかなりの盛り上がりを見せる。ニュピ前日に行われる「オゴオゴ」という、ねぷた祭りのようなお祭りのハリボテ人形があちこちで作られ、新年を迎える準備に余念がない。かくして私たち在住者は、1年に2回のお正月を楽しめるというスンポーだ(笑)。
1年に2回あるのはお正月だけぢゃない。ここではお盆も年に2回ある。ガルンガン(盆の入り)とクニンガン(盆の明け)といって、半年に一度やってくる。これは祭日ではないので、仕事が休みになるのはバリニーズだけという会社が多い(うちもそう)。だから私たちにはあんまり関係ないようなんだけど、この時期はみんな田舎に帰るから、道路がすいていて気持ちがいいのだ。お正月はこうはいかない。ジャカルタやスラバヤからマイカーで遊びにくる人たちのおかげで、一部の地域はひどい渋滞になる。うちの会社なんて、ちょうどこの「ゲロ混みエリア」のすぐ横にあるから、通うのでさえ一苦労だ。最近バリでもやっとオートマ車が増えて来たけれど、私の車はいまだにマニュアル。渋滞につかまってしまうと、左足が痛くてたまらない。今年こそはオートマ車に買い替えたいと思っているのだけれど、それもどうなることやら(ため息)。もうちょっと安くならないかなぁ。日本とインドネシアの貿易協定が結ばれたって話だから、もう少し待っていれば安くなりそうな気もするんだけどねぇ。……って話がそれたな。
たとえばすごい豪勢な食事をした時や、ものすごい嬉しいことが重なった時などに「盆と正月がいっぺんに来た」って言うでしょう? いや、言うんですよ、ヤングのみなさん。この盆と正月がいっぺんに来るというのが、バリ島では稀にだけどある。つまり旧暦の関係で、ニュピとガルンガン&クニンガンが重なる時があったのだ。こうなるとバリニーズは大忙し。なんてったって、お正月とお盆の準備を両方いっぺんにやらなきゃいけないのだから大変だ。彼らは信仰心が厚いので、こういう宗教行事には時間とお金と手間を惜しまない。バビグリン(ブタの丸焼き)を作ったり、縁起物の飾りを作ったりと大活躍なのだ。そんな盛り上がりを見ていると、日本も昔はこんな風に家族総出でお正月やお祭りの準備をしたんだろうなと思う。自分が経験したこともないのに懐かしくなるから不思議だ。
*「H.I.S.バリフリーク」2007年2号掲載 |
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
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「バリ島極楽チャンプル2
バリごはん」
田尾たんぼ著
ソニー・マガジンズ刊
\1,575
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今月のお言葉
毎日が盆と正月 バリ暮らし
*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。 |