4. レク好きな人々

 1月の末に引っ越しをした。新居はプルマハン(分譲住宅地)の中にある。引っ越しをして1ヶ月もしないある日曜日、このプルマハンで「住民のミーティング」なるものがあった。ひらたく言うと、「町内会の寄り合い」だ。私は本来、このテの類いのものは苦手なんだけれど、引っ越したばかりだし、新参者としてはご近所づきあいも少しはしておかないといかんのではないか……と思い、頑張って出席することにしたのだ。

 「ひとり一品、料理を持ち寄る」という、まるでホームjパーティのようなお題がでた、このミーティング。はたしてどんなことをするのかと思いきや、いきなり「クルプッ(えびせんべい)食い競争」なるものから始まった。パン食い競争のクルプッ版だ。いい歳こいたおとなたちが目の前にぶら下がったクルプッを、手を使わずに食べて早さを競っている。なんだかシュールな光景だ。しかも、その後には「椅子取りゲーム」まであった。音楽に併せて椅子の周りを歩くおとなたちはみんな楽しそうな笑顔。その和気あいあいとした光景は、平和そのものだった。

 このミーティング会場には、ゴザを敷いただけの小さな露店もいくつか出た。どうやら住民の中でショップを経営している人が店のセール品などを持ち寄ったらしい。服やカゴ、サンダルなんぞが並んでいる。そしてなぜかイエスキリストの本や肖像画などの「神様グッズ」まで売られていた。なんでだ?

 私が某免税店で働いていた時のことだ。ある日、館内放送で十数人のスタッフが呼び出された。その中になぜか私の名前もあったので、指定された場所に行ってみると、その小さな部屋にはまるで幼稚園のお誕生日会のような飾りつけがしてあった。? なに???? 私の頭の中はハテナマークでいっぱいだったけれど、ほかの人たちは平気な顔をしている。やがてカセットデッキから、インドネシアのお誕生日ソングが大音響で流れ始め、司会役のスタッフが「これから12月のお誕生日会を始めます」と高らかに宣言をした。……あぜん。あのぉ〜、仕事中なんですけどぉ〜ってカンジだ。けれど、誰もなにも気に留めることなく、出された「ぬるいコーラ」と「パサパサのカステラ」をいただいている。その後はもちろん、お約束のレクリエーションゲームだ。私はあまりのことにいたたまれなくなり、「お客さんが待っているから」と言い訳をして、こそっとその場を逃げ出した。

 バリの人たちはレクリエーションが大好きだ。大のおとなが集まってこんなことをするなんて……と、思わなくもないけれど、でもだからこそ、ここは平和なのかも。バカらしいと思っても、身体を動かせば自然と笑顔が浮かんで来るものだ。もしかして、世界中で勃発している民族間の争いごともこういうことをすればなくなるのではないか、と思う。つまり、争っている人たちを公園にでも集めて「パン食い競走」や「椅子取りゲーム」をさせるのだ。童心に返ってこんなゲームをしているうちに、殺し合いがバカらしくなってくる……なんてことになったらおもしろいのになぁと思う。そしてみんなで「ティダ アパぁ〜」と笑いあえば、世界平和は明日にでも実現するはずだ。



*「H.I.S.バリフリーク」2007年4号掲載
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com

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「マーリー
 ―世界一おバカな犬が教えてくれたこと 」
ジョン グローガン 著/早川書房 刊
\1,500

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今月のお言葉
人生は、悪い方には転ばない

*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。



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