6. 時をかけるおばさん
まったくもって、やんなっちゃう。どうしてこうも時間が早くたってしまうんだろう。この仕事を始めてからというもの、1週間なんて「あっ」と言っている間もないくらいに短い。1年が1ヶ月くらいの感覚しかないのだ。いや、これはオーバーでもなんでもなく、ホントの話。NHK国際放送で「今日はニューヨークヤンキーズの松井選手のお誕生日ということで、松井選手のインタビューをとってきました」なんてやってると、「え? ついこないだお誕生日やってなかったっけ? ウソ! もう1年たっちゃったってこと?」ってなカンジになる。まるで時空をワープしてしまったかのようだ。
日本で編集の仕事をしている方も同じことをおっしゃっていたが、こういう仕事は寿命を縮めるんだろうか。こんなにのんびりした南の島で暮らしながら、私はなにを生き急いでいるんだろうと、時々悲しくなってしまう。いや、好きでやってる仕事なんだけどね、もちろん。でも、それにしてもこの時間感覚ってどうよ? このままいくと、なにがなんだかわからないうちに人生が終わってしまうんぢゃなかろうか。ま、それもまた人生ってことなのか。・・・なぁ〜んて、ガラにもなく哲学(?)してしまう私。嗚呼、明日はどうなることやら。
私の理想の生活として、好きな仕事をしながら年に1〜2回は海外旅行とかしたいというのがあるのだけれど、こう時間がたつのが早いと、そんなことしている暇もない。いや別に、あたしゃ遊べないのがツラいって言ってるんぢゃない(言ってるけど)。やりたいことが山ほどあるのに、それが全部はできないっていうのがツラいのだ。あれもこれもやりたいのに時間がなさすぎる。
それにこういう生活をしていると、脳ミソの容量が追っつかないせいか、物忘れが思い切り激しくなる。あ、いや、もちろん、歳のせいっていうのもある。でもそれだけぢゃない。歳とってだんだん物忘れがひどくなっているのに、やることや憶えておかなければいけないことはどんどん増えていくので、脳ミソの許容量をオーバーしてしまうみたいなのだ。
私が住んでいるプルマハン(分譲住宅地)には月々決まった管理費を支払うシステムがある。毎月頭にセキュリティのおじさんが集金に来るのだけれど、先月の支払いの時、私の物忘れのせいでちょっとした事件がおきてしまった。お財布を持って外に出た私は、お支払いを済ませた後、玄関前に落ち葉が溜まっているのを見てしまった。それが気になってしまったので、ガレージの車の上にお財布と領収書をぽんと乗せて、かる〜く掃除をした。それがいけなかった。ずぼらなクセに、落ち葉ごときを気にするなんて・・・。翌日、外出しようとした私は、車のボンネットの上に自分のお財布を見つけてひっくり返りそうになった。見つけるまで、そこに置いたという記憶すら消えていたのだ。道路からの距離、わずか1mほどのところだというのに。あ、あり得ない。24時間以上、そんなところにお財布を置きっぱなしにするなんて、誰にも盗まれることなく、同じ場所にあったことに感謝しなくては。
脳ミソの容量を増やす薬ってないんだろうか。「脳トレ」も欲しいと思うんだけど、そんなものを買ってしまったら、ますます時間がなくなってしまうようで恐い。やっぱりここはひとつ、バリニーズを見習って「ティダ アパぁ〜」と、気にしないに限るのかもしれない。
*「H.I.S.バリフリーク」2007年6号掲載 |
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com
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「幸福な犬 」
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短い人生、石橋を叩き割るより
泥の橋にスライディングしよう
*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。 |