8. 多忙時代
毎日があっという間に過ぎて行く…ということを、前にもここに書いたと思う。都会で生活しているならまだしも、本来のんびりした熱帯の島であるはずのバリで暮らしながら、どうして「時間が足りない」となどと感じるんだろうか。
最近、友だちと話をしていて気づいたことがある。今から10年くらい前までは、仕事以外の時間は結構あったということだ。その頃、私とその友だちはもうバリに住んで働いていた。仕事自体はそれなりに忙しかったけれど、それ以外には暇をもてあますことだってあったのだ。
まず、テレビを見るために取られる時間がほどんどなかった。ローカルのテレビ番組には見たいものがあまりなかったからだ。NHKの国際放送も当時はまだバリに入って来ていなかったはずだし、入って来てからも最初はものすごく高くて、ごく一部の人たちにしか契約できなかった。つまり、私なんぞには高嶺の花で、縁のないものだったのだ。それが今ぢゃ月5,000円ほどで見られるようになったし、初期費用も当初は14〜5万円ぐらいだったのが無料になった。すばらしい。これだったら私にも余裕だ。おかげで今はNHKの番組にものすごく詳しくなってしまった。見たい番組もいくつもある。おまけに国際放送は24時間営業なので、見ようと思えばいつまででも見ていられる。そして睡眠不足になる。
これに追い打ちをかけたのがDVDの普及だろう。映画やドラマもこれで充分楽しめるようになった。昔はハリウッド映画を観るのも映画館でインドネシア語字幕だけだったのが、自分ちで日本語字幕の映画を観られるようになったのは画期的なことだ。これはうれしい。かなりうれしい。これも観たいし、あれも観たい。…そうしてまた睡眠時間が削られることになる。
バリでも今では大勢の人が普通に使っているパソコンやインターネットが個人に普及し始めたのも1997から1999年くらいの間だろう。私が自宅用にパソコンを買ったのもそのくらいの頃だ。パソコンもインターネットも確かに便利なものだと思う。私なんぞはネットのおかげで日本の会社とも仕事ができるし、FAXや郵便では考えられなかった料金とスピードで外国とやりとりができるというのは、海外在住者にとっては本当にありがたい。けれどもし、これがなかったら、睡眠時間がぐぐっと増えていたはずだ。ネットサーフィンに始まり、ブログやWEBサイトの更新など、一度ハマりだしたら時間はあっという間に過ぎてゆき、あっという間に朝になる。
さらに、ネットで気軽に日本語書籍を購入できて、ごていねいにバリまで送ってくれるとなれば、本を読む時間もほしい。ネットが普及する前は日本から遊びに来た友だちが置いて行ってくれた文庫本を、ぼろぼろになるまでみんなで回し読みしたものだ。けれど今、私の本棚には時間がなくて読み切れない本がたくさんある。これもあれも早く読みたい。寝てる時間などないのだ。
こうして、昔は手に入らなかったNHKとDVDとパソコンとネットと本のおかげで、睡眠時間はどんどん削られていく。そうして「時間が足りない病」にかかってしまうのだ。せっかく南の島に住みながらのんびりできないのはこのせいだ。文明の発展も善し悪しなのかもしれない。…って、結局自分で自分の首を絞めているだけなんだけどね(笑)。
*「H.I.S.バリフリーク」2007年8号掲載 |
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com
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*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。 |