10. あせもとしもやけ
生まれつき汗っかきの私は、子どものころ夏になるとよくあせもが出ていた。小学校5〜6年の時の担任はモロ戦中派だったので、授業中に小さなタオルで汗を拭いている私を見て「暑いと思うから暑いんだ。授業中に汗なんか拭くんぢゃない。授業に集中しろ」と、鬼のようなことを言った。今の時代にもしも小学校の先生がそんなことを子どもに言えば、母親がすぐに学校にねじ込んでいくだろう。けれど、同じく戦中派のうちの母親は、クーラーも扇風機もない教室で授業中に汗を拭けない娘のあせもがどんどん広がっていっても、先生に文句を言わなかった。つまり、幼い私は授業中にしたたり落ちる汗をぬぐうこともゆるされず、身体のあちこちにあせもがいっぱい出ているコになってしまったのだ。我ながらかわいそうだと思う反面、よく我慢したなとも思う。今だったら絶対にそんな我慢はできない。けれどあのころは、我慢するよりほかに選択肢がなかったのだから、しかたなかったんだろう。うん、よく我慢した。エラいゾ、私(笑)。
いつのころからだろう、はっきり覚えていないけれど、いつのまにか夏になってもあせもが出なくなっていた。だから、あせもっていうのは子どもにできるものだとばかり思っていた。と、30代も半ばを過ぎ、後半戦にさしかかったころ、私のあせもが再発した。それも、首から背中、お尻、胸、お腹、果ては太ももにいたるまであせもだらけになってしまったのだ。当時すでにバリに住んでいた私は、ちょっと貧乏だった。住んでいたコス(アパート)にはクーラーもなく、開閉できる窓はひとつだけ。風を通すための小さな窓もなかった。かろうじてボロボロの扇風機がひとつついていただけだ。昼間はバリ式の観音扉と窓を開けっ放しにしていたからそんなにつらくはなかったけれど、夜は熱気のこもった密室で大汗をかいて寝ていた。ああ、思い出すだけで暑苦しい。特に雨季は耐えられないほどの暑さだったので、それであせもが大量発生してしまったのだろう。静かで居心地も悪くないコスだったけど、1年で出た。その後はクーラーのある部屋で寝ているにもかかわらず、ちょっと多めに汗をかくとすぐにあせもが出る体質になってしまったのだ。今ではクーラーつけっぱなしで寝ても、起きると胸や背中が汗でびしょびしょになっていたりする。ま、まさか、更年期障害?! いや、まさかぢゃなくって、たぶんそうなんだろうな(涙)。
Tシャツの襟からのぞいた首筋にあせもが大量発生していると、まるでなにか悪い病気のように見える。子どもならあせもってわかってもらえるだろうけど、まさかこんないい歳こいたおばはんにあせもが出ているとは誰も思わない。少し顔をゆがめながら私の首を指差して「そ、それ、どうしたんですか?」などと訊かれることもしょっちゅうだ。最近では涼しい乾季でもあせもに悩まされている私。もういいかげんカンベンしてもらいたいんだけど…。
首から太ももまであせもを出しながら、かかとはなんと、しもやけ状態という不思議な現象も起きている。バリでしもやけってもちろんヘンだ。でもこっちの家は床がタイルなのでけっこうヒンヤリしている。ここでスリッパを履かないでいると、すぐにかかとが赤く、かゆくなってしまう。もちろん普段はスリッパを履いているけれど、時々忘れてしまったりもするもんで、上にはあせも、下にはしもやけという、夏冬兼用(?)状態の私の身体。あ〜あ〜、歳をとるって大変なことなんだなぁ。うっ、背中がかゆいゾ。あ、かかとも・・・(涙)。
*「H.I.S.バリフリーク」2007年10号掲載 |
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com
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「ガンジス河でバタフライ 」
たかのてるこ著
幻冬舎文庫
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歳はとってみなければわからない。
男はつきあってみなければわからない。
*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。 |