12. ノド元過ぎればカラさ忘れる
今年の1月に「バリごはん/バリ島極楽チャンプル2」という本を出させていただいた。ちょうど去年の今頃はその準備で、取材だの執筆だのと大忙しだったのだけれど、まるで昨日のことのようなのに、1年もたってしまったなんてホントびっくりだ。
この本はその名の通り、バリのごはん(インドネシア料理)だけを集めたものなので、取材先も必然的にインドネシア料理のワルン(食堂)やレストランになる。そして私は毎日毎日インドネシア料理ばかりを食べ続けた。しかも時間がないので1日に3軒も4軒も回る、なんてこともした。1軒で3〜4品頼むなんてこともあった。いくらおいしいものとはいえ、似たようなものを食べ続けるには限界がある。これが和食なら問題ないのだけれど、生まれ育った国以外の料理を毎食食べ続けるのはキツい。日本人だったら絶対に味噌と醤油が恋しくなる。それでも締め切りのある仕事なので、毎日毎日ココナッツとターメリックをふんだんに使ったこちらの料理に大好きなサンバル(チリソース)をたっぷりつけて食べ続けていたのだ。しまいには汗がターメリック臭くなり、身体が黄色くなってしまったような気さえしてきた。サンバルの食べ過ぎでお腹の調子も悪い。食べることが大好きで、おいしいものへの執着心がひと一倍強い私でも、これにはいいかげんゲンナリしてしまった。ああ、納豆とお味噌汁でごはんが食べたい。焼き魚とかあればもっといい。欲を言えば、おいしいお漬け物もつけてほしいなどと、ひとりで悶々としたものだ。出版社の担当の方には、「なにも全部食べなくても、残したっていいぢゃないですか」と言われたけれど、私としてはそうはいかない。そんな食い散らかすようなことをしたら、食いしん坊の名がすたる。けれどそのおかげで、ただでさえ重かった体重がさらに3kgほど重くなり、校了した頃にはさすがの私も「インドネシア料理はしばらくいいや」などと思ったものだ。
ところがそれから1ヶ月もしないうちに、あれほどゲンナリしていたココナッツ&ターメリック+サンバル風味がまた恋しくなってきた。本が発売される頃にはまた「ナシチャンプルが食べたいなぁ」などと思っている自分がいたのだ。これには我ながら呆れた。ちょっと早すぎるんでないの? こんな調子だから、1年もたった今となっては完全復帰もいいところで、自分で書いた本のページをめくりながら「今日はこれ食べに行こうかなぁ。あ、やっぱ、こっちかなぁ」などと、ヨダレをたらしながらニヤケている始末。もう、食いしん坊ってホント、イヤ。
私はサンバルマタという生サンバルが大好きなのだけれど、調子に乗って食べ過ぎるとお腹が痛くなって、トイレに行くとお尻の穴まで痛くなってしまう(ビロウな話で恐縮です)。ヒドい時には、しばらく動けなくなるくらい痛い。ひぃひぃ言いながら「もうサンバルマタなんか食べるもんか」と心に誓うものの、これまた2〜3日後にはナシチャンプルにサンバルマタをたっぷりつけて食べているからオドロキだ。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というけれど、食いしん坊にとってはちょっとやそっとの痛さやツラさなど、食欲の前には忘れ去ってしまうものらしい(実際はちょっとやそっとどころぢゃないけれど。笑)。まさに「喉元過ぎればカラさ忘れる」だ。あ、イヤ、「尻元過ぎればツラさ忘れる」かな? いずれにしても、おいしいものを求め続けて行くのが私の人生の究極の目的なのかもしれないなどと、勝手なことをつらつらと考える今日この頃だった。
*「H.I.S.バリフリーク」2007年12号掲載 |
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com
Member

★会員募集中★
会員条件
1. 体重60kg以上
2. 体脂肪率30%以上
3. 食べることが好きなこと
Books
今月のオススメ本

「11分間 」
パウロ・コエーリョ 著
角川文庫
¥700 (税込)
Words
今月のお言葉
道を極めるには、ちょっとやそっとの痛さやツラさにめげてはいけない
*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。 |