17. 思い込んだら聞きまちがい

 その昔、「巨人の星」の主題歌の冒頭部分「♪おもいこんだぁら しれんのみぃちぃを〜♪♪」っていうのを「重いコンダーラ 試練の道を」だと思い込んでいた人が多かったという話を聞いたことがある。「コンダーラ」という重い訓練用具をつけて、主人公の星飛雄馬が試練の道を歩く・・・んだそうだ。なるほど。

 そういう私も郷ひろみの「よろしく哀愁」で「♪もう泣くのも平気 よろしく哀愁ぅ〜♪♪」っていうのを「もう夏のモヘイキ よろしく哀愁」だとばっかり、つい数年前まで思い込んでいた。「モヘイキ」って、自分でもなんだかよくわからないけれど、「吐息」みたいな? 「ため息」みたいな? そんなもんだと思い込んでいたお子ちゃま時代(『巨人の星』も『よろしく哀愁』も古くてゴメン、若人諸君)。

 子どもっていうのは自分にとって未知のものがたくさんあるし、想像力が豊かだから、耳で聞いた音を自分なりに解釈する傾向があるよね。おとなになると「コンダーラ」や「モヘイキ」なんてもんがあるなんてこと、想像することさえしない人がほとんどなんだろう。それができれば糸井重里なみのクリエーターになれるかも?!


 ところがこれが外国語になると話は別。人間っていうのは、おとなになってから母国語以外の未知の世界に飛び込むと、耳から入ってくる音を子ども以上に自分勝手に判断する傾向があるらしい。

 たとえばうちの会社のマネージャー、みわきち(女性ですよ)。今から12年ほど前、バリでいちばん最初についた仕事は、某旅行会社のゲストリレーションだった。日本ではデザイナーとして働いていた彼女が初めての旅行業界に飛び込んだのだ。そして初めて耳にした「Superior」という言葉。英語の辞書には「上質(等)な、上級の」と書いてあるけれど、旅行業界では中級クラスのホテルや部屋を指す。英語では「スーペリア」と読み、日本語でもほぼ同じで、カタカナ表記も「スーペリア」。ところがインドネシア語ではこれを「スーペリアル」と発音する。「r」は常に巻き舌になるからね。みわきちにとって初めてこの言葉を聞いたのがインドネシア人スタッフとのやりとりだったから、当然のように彼女の頭の中では「スーペリアホテル」が「スーペリアルホテル」になっていた。そして書いてもいた(嗚呼)。日本人にスーペリアルって言っても通じないよ〜。

 インドネシア語ではこんな風に英語をそのまま使ってはいるんだけれど、読み方の違う単語がたくさんある。「スーパルマルケッ(スーパーマーケット)」「ハンバルガル(ハンバーガー)」などのr系のほかに、「コンビナシ(コンビネーション)」「ウニック(ユニーク)」などなど。日本で日常的に使っていない言葉をバリで初めて聞いた人がこういう発音になってもしかたないのかもしれない。けれどカタカナで書く時に、これをこのまま書くと赤っ恥をかくことになりかねない(シャレか?)。

 英語圏での暮らしが長かった人がカタカナで「ドロフィンツアー」って書いているのを見たことがある。ド、ドロフィンって・・・。それはドルフィンでしょうが。しかももう印刷までしちゃってたし・・・。けれど彼女は堂々と言ってのけた。「だって、ドロフィンでしょう?」と。

 バリで「スーペリアル」とか「ドロフィン」とか、こんなおちゃめな日本語表記を見つけたら、これも一種の聞きまちがいだと思って「てぃだあぱ〜」と笑いとばしてあげてね。って、もしかして私もやってるかも(自爆)。



*「H.I.S.バリフリーク」2008年6号掲載
Profile

田尾たんぼ:神奈川県生まれ、東京育ち。1992年9月インドネシア共和国国立ガジャマダ大学(ジョグジャカルタ)に語学留学。1993年12月ジョグジャからバリ島に移住。旅行会社、免税店、アクティビティ会社勤務を経て、1998年独立起業。日本語印刷物、ホームページ等の制作会社TAO代表。本誌編集責任者。著書に「バリ島極楽チャンプル」「バリごはん バリ島極楽チャンプル2」(共にソニー・マガジンズ)。海外書き人クラブ会員。
WEBサイト「極楽たんぼ」
http://www.taotam.com

Member

★会員募集中★
会員条件
1. 体重60kg以上
2. 体脂肪率30%以上
3. 食べることが好きなこと

Books
今月のオススメ本

「k.m.p.の
 金もーけプロジェクト 」
  ムラマツ エリコ著
  なかがわ みどり著
  メディアファクトリー 刊
  ¥ 924 (税込)

Words
今月のお言葉
思い込んだら命がけ
それがオンナの生きる道


*Tidak Apa Apa = ティダ アパ アパ/なんでもない、大丈夫などの意味で煩瑣に使われるインドネシア語。口語では略して「ティダ アパぁ〜」と言うことも多い。



BACK | NEXT

TIDAK APA MENU | HOME